地球の気温をチェック

350.org
9 min readSep 27, 2016

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2016年の「地球」と「各国の地球温暖化政策」をチェック。 パリ気候変動会議(COP21)を経て、私たちは今どこにいるのか?

「前例のないスピードで、各国は次々とパリ協定を批准、協定の発効に向けて大幅に前進しています。しかし、パリ協定の掲げる目標と、その達成のため実際に各国政府がやっていることの間には、非常に大きな溝があります」

メイ・ボーブ、350.org事務局長

国連が先日パリ協定が11月4日に発効することを発表しました。 各国代表がパリに集結した2015年12月から、ここに至るまでの道のりを振り返る、重要なひと時となっています。 ただ、2016年に何が起きたかを見てみれば、「この状況に満足している場合ではない」ことだけは、明らかです。

下記、2016年の気候変動にまつわる世界の出来事をまとめましたが、そのすべてをリストアップしたものではありません。)

気候変動の影響

2016年は、観測史上一番暑い年になろうとしています。 2016年8月に至るまでの16ヶ月間は、毎月連続して最高気温を記録しました。 その勢いが衰える気配はありません。

今年2月、地球の平均気温は、産業革命前と比べ最高で1.38°Cも上昇しました。 北極では、 今年最初の3ヶ月間の気温が、平年と比べ4℃も上昇しました。

イラクとクウェートでは、この夏、東半球観測史上最高となる54°Cを記録しています。

太平洋の複数の海域でも、海水温が平年より2℃上昇し、サイクロンをますます巨大化させています。中でも、サイクロン「ウィンストン」や非常に強い台風1号(アジア名ネパルタク)は、それぞれフィジーと台湾に甚大な被害をもたらしました。 またこの秋に発生した、「スーパー台風」と呼ばれる台風14号(アジア名メランティ)は、「ハリケーンの強度を5段階に分類した“サファ・シンプソン・ハリケーン・スケール”に則ると、既存のカテゴリを超える、カテゴリ6に相当しただろう」と言われています。

海水温の上昇はまた、サンゴの健康状態が悪化して起こる「白化現象」の原因にもなっています。サンゴの白化現象は、現在世界中の海域において、過去最大規模で発生しているのです。 オーストラリアのサンゴ礁地帯グレートバリアリーフでは、全体の93%にまで、白化現象が広がっています。

干ばつと気温上昇が深刻化するアフリカ東部と南部では、3,600万人もの人々が飢えに直面しています。 エチオピアは、過去数十年で最悪の干ばつに見舞われました。

また世界中の至る所で、大洪水が発生しています。 特に中国、パキスタン、米国ルイジアナ州の被害は深刻でした。 中国では今年6月、近年まれに見る豪雨が発生、 甚大な被害がもたらされました。 米ルイジアナ州も、複数の大規模洪水に見舞われましたが、 最近の豪雨では「一部の地域で24時間の雨量が300ミリを超え、72時間の雨量は600ミリを超えた」そうです。

一方、ソロモン諸島では、海面上昇により5つの島が完全に水没したことが、調査で明らかになりました。 これ以外の6つの島も、部分的に水没しているそうです。 またツバル当局も、水没で4つの島を失ったと報告しています。

チェリー・フォイトリン(Cherri Foytlin)撮影2016年8月14日ルイジアナ州

ルイジアナ州のジャン・シャルル島(Isle de Jean Charles)に暮らす先住民族「ビロキシー(Biloxi)」、「シティマシャ(Chitimacha)」、「チョクトー(Choctaw)」の人々は、気候変動を理由に連邦政府の補助金を受けて移住する、米本土初のコミュニティとなってしまいました。 アラスカ州にある先住民族の村「シシュマレフ(Shishmaref )」も、海面上昇による海岸の浸食が進み、投票で村全体の移住が決定しています。

各国政府の動き

温室効果ガスの排出削減を誓った各国政府ですが、ここではその実際の政策についてお話します。 石炭、石油、天然ガスを地中から採掘しながら、「パリ協定」で掲げた目標を達成することは不可能です。

スウェーデン政府は、同国の電力最大手バッテンフォールがドイツに所有する炭鉱の売却を承認、これによって、この炭鉱の褐炭は全て消費されることになります。「パリ協定」の約束も気候リーダーとしての立場も、スウェーデン政府は放棄したのです。(同炭鉱の褐炭埋蔵量は、二酸化炭素に換算すると12億トン。スウェーデンの二酸化炭素排出量の数倍に相当します。)

英国は、パリ会議からわずか数週間後、再生可能エネルギーの助成金を大幅に削減、「ダッシュ・フォー・ガス(dash for gas)」の名の下、改めて天然ガス依存の方針を打ち出しました。

オバマ政権は、ルイジアナ州の大規模洪水を目の当たりにしながら、その直後に石油と天然ガス鉱区借用権の売却を承認しています。

フィリピンでは、就任したばかりのロドリゴ・ドゥルテ大統領が、「パリ協定は尊重しない」と言い放ちました。

米国と中国は、G20(金融世界経済に関する首脳会合)で「パリ協定」の批准を共同で発表しました。それに続いて、温室効果ガス排出世界第4位のインドも批准を発表しました。さらにEUの批准表明を受けて、協定の発効要件である締約国の温室効果ガスの排出量が世界全体の55%を超えました。

ブラジルは「パリ協定」を批准したものの、実際にはそれとは真逆の政策を進めているようです。 例えば、フラッキング(水圧で岩を破砕してシェールガスの採掘をする採掘方法)をはじめ、従来とは異なる手法を用いた石油・天然ガスの採取を承認したり、天然ガス産業への投資を奨励したり、大規模なエネルギー計画の承認手続きを簡素化するため、環境開発をめぐる法律を改正したりしています。

でも、その一方で...

ポルトガルは、連続4日間、再生可能エネルギーだけで全電力を供給しました。

チリでは、太陽光発電の価格が最安値を記録しています。

米国と中国は、G20(金融世界経済に関する首脳会合)で「パリ協定」の批准を共同で発表しました。

欧州では複数の都市が、立て続けに化石燃料からの投資撤退(ダイベスト)を実施しています。 オーストラリアのシドニーも、ダイベストを約束したところです。

ベルリン化石燃料ゼロキャンペーン

市民の力

何としても化石燃料を地中にとどめておくため、世界中の至る所で、地域を挙げた取り組みが進んでいます。

世界各地の大勢の市民が「変わらないこの社会を変えなければならない」と立ち上がり、過去最大規模の気候ムーブメントをつくりあげているのです。 人々は、従来型の抗議運動の枠組みを超えた新たな手段で、石油・石炭・天然ガスを地中にとどめておくよう訴えています。例えば、炭鉱を封鎖したり、線路に立ち入って石炭輸送を妨害したり、化石燃料の採掘現場や業者を人間の鎖で囲んだりしました。またその現場が海上なら、カヤックで囲んだりもしました。さらに世界13カ国で、一丸となってこの問題に取り組むためのミーティングも開催しました。

電力大手バッテンフォール所有の炭鉱売却が決定したスウェーデンでは、化石燃料を地中にとどめ、またその責任を政府にも取らせるために、アクションを起こしていくことをスウェーデン市民が誓いました

米国では、ノースダコタ州からイリノイ州を結ぶ「ダコタ・アクセス・パイプライン」建設反対運動が全米規模の市民運動へと広がり、世界中の人々に勇気を与えています。

ダラス・ゴールドトゥース撮影

パリ会議以降、190の組織がダイベストを実施しました。 新たにダイベストメントを掲げた組織の大半は、多数の人口を抱える自治体や宗教組織です。

カナダでは市民の訴えに押されて、政府が「気候テスト」の義務づけに合意しました。今後、新たに建設される全てのタールサンド・パイプラインについて、気候への影響を測る「気候テスト」が課せられることになったのです。

ブラジルでは、反フラッキング運動がますますヒートアップしています。 同国の70以上もの都市で、フラッキング禁止法案が可決されたのです。

化石燃料 VS 再エネ

ではこの数ヶ月間、再生可能エネルギーと比べ、化石燃料企業はどうなっているのでしょうか?

全世界で石炭火力発電所の新設件数は、発電容量にして14%も落ち込みました。 これは、欧州連合全体の石炭火力発電量に匹敵します。

ドイツ最大手のエネルギー企業エーオン(E.ON)は、化石燃料の座礁資産化により、2016年の上半期で30億ユーロを損失したことを認めました。

一方、米最大手の石油企業エクソンが今年7月に計上した利益は、1999年以来の低水準となりました

また、エクソン社の気候変動をめぐる資産の評価方法については、現在SEC(米証券取引委員会)が調査を行っています

風力・太陽光などの再エネ発電量は、2016年に入ってから毎月連続で増加しています

スコットランドでは、風力タービンが、最低でも1日に1基は増設されています。

最新の世論調査によると、3分の2以上の市民が、住民に直接利益をもたらす地域レベルの再エネ計画を支持しているそうです。

そんな今こそ、私たち市民が政府の責任を問うべき時です。 真の解決策は、すでに気候科学と正義が明らかにしています。それを現実のものとするために、一緒に取り組んでいきましょう。 お住まいの地域の350キャンペーンを探す

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350 is a global org that's inspiring the world to rise to the challenge of the climate crisis. This blog is a look behind the scenes at how we do that.